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​唯一無二の食人(しょくにん)

古谷 大介
Daisuke Furutani

Interview

―岡山市の本町の居酒屋から、海が見える日生(ひなせ)へ活躍の場を移されたわけですが、そのきっかけはなんですか?

 

ここから見える風景に惚れて・・・と言うとカッコつけすぎですね!

10年近く、居酒屋の雇われ店長として勤めていたんですが、いよいよ独立、となった直後、コロナの影響を受けて、夜、アルコール提供をする店は営業が難しくなりました。

お昼に弁当を売り出してみたり、時短営業してみたり・・・厳しい条件の中、周辺のお店の同業仲間とも励ましあいながら、試行錯誤でなんとか店を守ってきたのですが、毎日、二転三転する国や自治体の方針に振り回されて、いろいろと悩みは尽きませんでした。

そんなとき知り合いの方から、この場所(頭島)で店をやってみないか?と声をかけてもらったのがきっかけです。

  

―そうだったんですね。それにしても周辺環境も業態も、居酒屋とはずいぶん異なります。不安はなかったのでしょうか?

 

まったくない、と言えば嘘になりますが、初めてここを訪れて風景や店内を見たとき、新しい世界がバァーッと目の前に広がったんです。

僕は自分の直感を信じているので、それで心が決まりました。

コロナのせいで社会のみならず自分自身も閉塞感に苛まれていましたが、その時、一気に打開できた気がしましたね。

居酒屋で一緒に踏ん張ってくれているスタッフのことを考えると、複雑な思いもあったのですが、スタッフ達は、僕の最後かも知れないけど、もしかしたら最初かも知れないチャレンジを応援してくれました。そうそう、その時のスタッフが今も手伝ってくれているんですよ!本当にありがたいことです。

  

 

―なるほど。確かに、このロケーションは訪れるゲストはもちろん、働き手にとっても大きな魅力のひとつですね。

 

そうなんです。おかげさまで、休日のランチタイムは結構忙しくて、キッチンの僕もフロアのスタッフもバタバタしがちなのですが、ふっと外に目をやると広がる青い空と青い海が、忙しさに波立つ心をスーッと落ち着かせてくれます。

あ!!この風景の中で一緒に楽しく働いてくれる仲間をいつでも募集しています!

  

 

―おっ、突然の求人情報(笑)ちなみに、休日のランチタイムはファミリーの利用が多いのでしょうか?

 

そうですね。休日は比較的ファミリー層が多いです。僕はこのキッチン星のを10年も20年も愛される店にしたいと思っています。今、お父さんやお母さんと一緒に来てくれているお子さんが、大きくなって自分だけで来れるようになり、そしていずれ結婚して授かった子供を連れて、またこの店にやって来る・・・2世代、3世代で来てくれるような息の長い店にするのが夢です。

  

 

―では、そのためにも日々、心がけていることを教えてください。

 

できることをできるだけ、をモットーにしています。「食」という字は、人を良くする、と書きます。僕は「食」を通じて、誰かが良くなるお手伝いをしたい。大きな天災や景気の悪化、コロナの影響による生活様式の変化など、毎日、様々な試練が課されるシビアな世の中で、比較的、手軽に叶えられる幸せのひとつが「食事」だと思います。「キッチン星の」で提供している1,000~2,000円の価格帯のランチは、毎日通うには難しい設定かもしれません。また、ベストな状態で召し上がっていただくために作り置きをしていないので、ハンバーグや揚げ物などは提供に時間がかかります。

早い・安い、が売りのファストフードとは違う、ゆったりとした気分でゆっくりと食事を楽しむ贅沢さ。そのひとときと空間を提供するために、僕は僕のできる限りの努力を惜しみません。

  

 

―私も初めてメニューを見た時は、正直「高っ!」って思いました(笑)でも、実際に食べてみてその内容と料理に込められた古谷さんの心に「納得!」と思いました。

 

あ、やっぱり?「高っ!」って思いました?(笑)確かに、召し上がったことがない方には「高い」と言われますね(苦笑)でも、一度召し上がると「おいしかった!」「満足です!」とおっしゃってくださるので、それが励みになっています。僕は自分が作る料理のひとつひとつは「歌」だと思っています。僕が作って歌う「歌」を聞く人、すなわち食べてくださるお客様がどのように受け止めてくださるか。もしかすると、僕が届けたい思いとは違う解釈をされるかもしれない。でも、僕はそれでいいと思うんです。形は違えど、そのお客様が僕の歌に何かを感じて心を動かしてくださったのなら、僕はそれで幸せです。

 

  

―その古谷さんの思いが届かない場合もあるのでは?口コミサイトを見ると、結構、辛口な批評も見受けられます。

 

そうなんです。これはもう本当に、僕の至らなさに尽きます。2021年8月にOpenした直後、予想をはるかに超える数のお客様にお越しいただいたのですが、キッチンもフロアもオペレーションが確立できていない状態だったので、混雑時には料理の提供にずいぶん時間がかかったり、入店をお待ちいただいたりすることがありました。準備が不十分だったと猛省しています。僕も人間なので、やっぱり辛口の批評には少なからずダメージを受けますが、あえての「叱咤激励」と受け止めて、改善すべき点は改善するように努め、自分の信じる道を一歩ずつ進んできました。Openから1年近く経つこの頃では「キッチン星の」の良さを理解し、リピートしてくださるファンも増えてきました。

 

 

―なるほど、そういえば今日も何人かリピーターさんのような方がいらっしゃいましたね。

 

前回とは違うメニューを食べたいから、と何度も足を運んでくださる方もいらっしゃいます。そんなお客様の期待に応えられるよう、メニューも季節や食材の旬を意識して、マメに進化させています。僕が投げた”どストレート”の球をお客様が体の”ど真ん中”で受け止め、そして「おいしかったよ!」と投げ返してくださる。「食」は作る人と食べる人の心のキャッチボール。それが楽しくて、今日も僕はより皆様に喜んでいただける新しいメニューを考えています。

  

 

―最近では、日生近郊で獲れた魚をふんだんに使った海鮮丼がデビューしたそうですが、新鮮な魚はどうやって手にいれているのですか?

 

近所の鮮魚店さんなんですが、ここの店主が僕の目指すものをよく理解してくれているので、毎朝、こちらの希望にあった魚を入れてくれます。魚に対する愛情と情熱がハンパない若者で、彼と魚について話しをするのが大好きな時間です。彼おすすめの料理屋さんにふたりで呑みに行ったりもします。

 

  

―1年足らずの間に、すごい馴染みようですね(笑)この場所を古谷さんに紹介した人は「キッチン星の」が日生地域を盛り上げる仲間になってほしい、という期待もあったのでは?

 

そうですね・・・そんな期待・・・あったのかな?(笑)そういえば、鮮魚店の店主と呑みに行った料理屋さんで、そこの女将さんが「一緒に日生を盛り上げていきましょうね!」とおっしゃってくださったのですが、実は僕自身は自信を持ってそう言える立場ではまだないと思っていて・・・。ただ、この地域の恵みを活用して、自分のするべきことをコツコツと積み上げていけば、そのうちそれが地域を盛り上げることにつながるはずだ、とは思っています。結果が後からついてくる、そんな感じかな?そしてそのうち、この場所になくてはならない店になれたら、それはもう最高ですね!

  

 

―ますますこれからの「キッチン星の」そして古谷さんの進化が楽しみですね。まだまだいろいろと伺いたいところですが、それはまたの機会の楽しみにしましょう。最後に、お客様に向けてメッセージをお願いします。

 

いつもキッチン星のをご愛顧いただきありがとうございます。「行ったことないよ」という方は、これからお会いできることを楽しみにしています。漁師町である日生は、新鮮な魚や牡蠣はもちろんのこと、みかんも有名で頭島ではみかん狩りやBBQも楽しめます。また「キッチン星の」がある「ひなせうみラボ」では備前市の特産品販売のほか、カヌー体験もできますし、頭島グラウンドゴルフ場も人気スポットのひとつです。カップルで、ファミリーで、お友達同士で、ぜひ一度、遊びに来てくださいね!僕はいつでもここで待っています!

  

 

2022年5月吉日

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